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「チョウの羽は宝の地図なんだ」
去年引っ越したハル君が言ってた。
「チョウドウって言う、チョウだけが使う秘密の道があって、最後まで追っ掛けると、宝物が眠ってる。チョウの羽にはその地図が書いてあるんだって」
思い出したのは、目の前に一匹飛んできたから。白っぽい黄色の羽が花に止まって、息をつくみたいに閉じたり開いたりする。羽に黒い模様がある。
ひらひらしてるくせに、チョウって案外すばしっこくて、追っ掛けても途中で逃げるんだよね。背中からそぅっとのぞく。ハル君の言った地図をちゃんと見たい。それでハル君に『見れたよ』って教えたげるんだ。
スマホのカメラで開いたとこが写せれば。捕まえなくていいんだ、見たいだけなんだから。もうちょっと、あと5センチ――
指の先をガリッ!て引っかかれた。
「いっ……たぁ」
開いた羽がフゥッ!てうなる。模様の真ん中、きらきら光る目が二つ。
それは地図じゃなくて猫だった。
去年引っ越したハル君が言ってた。
「チョウドウって言う、チョウだけが使う秘密の道があって、最後まで追っ掛けると、宝物が眠ってる。チョウの羽にはその地図が書いてあるんだって」
思い出したのは、目の前に一匹飛んできたから。白っぽい黄色の羽が花に止まって、息をつくみたいに閉じたり開いたりする。羽に黒い模様がある。
ひらひらしてるくせに、チョウって案外すばしっこくて、追っ掛けても途中で逃げるんだよね。背中からそぅっとのぞく。ハル君の言った地図をちゃんと見たい。それでハル君に『見れたよ』って教えたげるんだ。
スマホのカメラで開いたとこが写せれば。捕まえなくていいんだ、見たいだけなんだから。もうちょっと、あと5センチ――
指の先をガリッ!て引っかかれた。
「いっ……たぁ」
開いた羽がフゥッ!てうなる。模様の真ん中、きらきら光る目が二つ。
それは地図じゃなくて猫だった。
ファンタジー
公開:20/06/29 23:59
創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞
いつも本当にありがとうございます!
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