0
2

私達、本の虫と呼ばれる人々は紅い糸で結ばれている。だから町で出会えば言葉を交わさずともお互い本の虫である事に気付く。
挨拶代わりに鞄の中から本を取り出す。相手も同じように本を取り出す。これで十分だ。お互い、今何を感じているかは本が教えてくれる。
言葉を必要としない関係性を私達本の虫は楽しんでいる。

「君、本の虫なんだって?どんな本読んでんの?お勧めの本教えてよ?」
私達本の虫が社交場に出ると必ず聞かれる質問だ。その言葉を私達は待っていた。ここぞとばかりに喋り出す。
そんな様子に相手は引く。しかしもう遅い。相手はもう私の糸に捕らわれている。
本の虫は何でも知っている。朱い糸が何でも教えてくれる。
本の虫、別名・蜘蛛は今日も巧みに意図を操り、相手を捕食する。
本の虫の男女は結婚しない。男は女の為に食い殺される覚悟がないからだ。

…食事を終えた私はその後、珈琲を嗜み、本の世界に酔い痴れた。
ホラー
公開:20/06/29 19:14
虫知虫朱 蜘蛛に珈琲を飲ませると酔う

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容