空耳

神様なんていやしない。おばけなんて嘘さ。
そんな事を言っている内は私の声も聞こえないわな。
そうやって耳を塞いで、偶に聞こえる私の声を空耳と言った。
そういうの、「自分の殻に閉じこもる」って言うんだよ。
あ～、やだやだ。子供の時はあんなに素直だったのにさ。今じゃ私の事をなかった事にする。寂しいものだね。
それを常識って言うの？そんなものの中に引きこもっている内は何も手にする事は出来ないよ。
だって両手は耳を塞ぐのに使ってるじゃん。
常識の殻を破って、空耳に耳を傾ける。その為に両手を伸ばす。そうする事でやっと私の大きさを知るのさ。
私が何かって？空だよ。
そう、君達の上に広がる空こそ、私の正体さ。
空耳が聞こえないのは君が空の中にいるからだ。そこは空虚だろ？
空耳が聞こえたって事は君は空の広さを知ったって事だ。
さあ、羽ばたくといい。世界は広いぞ。
両手を伸ばす君は今なら何だって掴めるさ。