生きたい

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ビルの屋上で私は道行く人を見下ろしていた。胸の高さのフェンス越しに。
実際、落ちたら痛いだろうな、毎日は楽しいとは言えないけど、やっぱり生きたい。そう思うのが目的だった。
仕事の昼休みに気が向くと私は屋上で時間を潰す。
そんなある日、声をかけられた。
「あなたは死にたいとでも思っているんですか?」
見知らぬ同年代の男性だった。
「…そんなことは思っていないですよ」
「なら良かった。僕は隣のビルで働いているんですが、たまに窓からあなたが見えるんですよ。綺麗な幽霊みたいだと思っていたら、やっぱり美人だ」
連絡先を交換したのはつまらない毎日を少しでも変えたかったから。
何度か会ううちに恋人になった。彼と過ごす時間は楽しかった。1年後に仕事をやめ、結婚した。この人と生きたいと思った。
「出会った頃、君が命を捨ててしまいそうで心配だった」
「若気の至りだったの」
子どもが出来た時、私は笑って言った。
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公開:20/06/27 15:49

花菜子

2020/5/11始めました。400字の無限の可能性に魅力を感じています。思いついたことを記録しています。
最近あまりログインせず、コメントに気づかないこと多く、すみません。
 

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