暇な理由

新型ウイルスによる新しい感染症は、瞬く間に広がった。
通りには誰の姿もなく、窓から漏れ聞こえるのは泣き声か呻き声という有り様。
病院はパンク状態。というより、医者や看護師までが倒れてしまっているので、病院に来たところで治療も看護も出来ない。
まさに、地獄絵図、であった。

さて、ここはある裁判所の一室。
「最近、暇になったなあ。」
「はい。何しろ働き手が皆倒れておりますので。」
「ここに来る奴も居なくなったか。」
「連れてくる者が居りませんからね。」
「はあ。まさかこんな事態になるとはなあ。地獄にウイルスが広がるとは…」
「あ、冷めちゃいましたね。閻魔様、お茶の取替えを。」
「ああ、済まないな。」

一方とある国の死亡統計室。
「このところ死亡診断書が全然届かないな。死人が出てないのか？」
「暇ですよねえ。葬儀社も軒並み暇らしいですよ。」
「ううむ、不思議なもんだなあ。」