水色河童

2
3

 『なんでもひとつ願いを叶えます。叶わない時は泡となるでしょう。』
 なんとも矛盾した文言だ。隠れ家のような古本屋で見つけた本をじっくり読んでみる。龍神の池の蓮の葉の朝露を飲めばいいらしい。青年は池を探し、一本だけ咲いている水色の蓮の葉の朝露を飲んだ。叶えたい願いがあったのだ。
 意識が一瞬飛んで我にかえると、全身水色になっている。手には水掻きがあって頭には皿がある。水色の河童になったのだ。指には赤い糸、池の中まで続いている。手繰っていけば両思いだったはずの彼女に会える。水と同化できるらしく、池の中から川へ、川から水道へ、夢中で糸の先へ行く。
 水道の水に隠れて一軒の家へたどつくと、赤い糸は笑顔の彼女の方へ続いていた。水色河童は喜ぶが、側には夫と産まれたばかりの娘。赤い糸は娘の指に。
 頭の上の皿がパリンと割れた。身体は無数の細かい水滴になると天へ登っていく。
 青年は泡になった。
 
 
ファンタジー
公開:20/06/28 15:07
更新:20/06/28 15:14

ゆらら風

ショートショートは時間を気にせず、読めるのがいいですね。情熱大陸を観て、書いてみたらはまりました。ワクワク、ほっこり、??な素敵なお話を書けたらいいな。
 突然のフォローすみません。まだまだな私の文章をフォローしていただいて、ありがとうございます。
 へこたれず、素敵な世界を創れるよう精進あるのみです。ᕦ(ò_óˇ)ᕤ

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容