切りかけのネギ

4
3

朝起きて台所に行ってみると、まな板の上に切りかけのネギと包丁が置いてあった。ネギは青々しく、瑞々しい香りを放っていた。(美味しそうなネギだな、薬味にしても何でも合うしね)
しかし、家の中に家族は誰もいない。
(切りかけのネギ?一体どうしたんだろう?素麺でも買いに行ったのかな。それなら、コンビニだから10分以内に戻るだろう)
でも、30分たっても1時間経っても、家族は帰ってこなかった。
(なんかおかしいな。まさかこれが、ダイイングメッセージってやつ⁉︎、ネギが⁉︎)
夕方になって家族が戻ってきた。
「ちょっと買い物に出かけたら、近所の人に偶然会って、庭の花を見せて貰ってたら、お茶に誘われちゃって」
なーんだ。切りかけのネギも忘れていたほど、楽しい時間を過ごしていたのなら、それでもいいか。
でも、時間が経ったネギは少し乾燥していて、こんな声が聞こえてきそうだった。「ずっと待っていたよー」
ファンタジー
公開:20/06/28 13:08

ユーカリ( 地球上の人 )

田丸先生のショートショート講座に出席
したことがある。
時々、ショートショートを作成して、投稿します。
何気ない日常にある不思議な世界が好き。
400文字以内に収めるのが難しくも面白い、脳トレ。
皆様の投稿を読ませて頂き、
日本語の奥深さを味わってます(^^)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容