レインティー

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街の路地裏に隠れ家的な喫茶店「雨宿り」がある。
しっとりと静まり返った店内には、ショパンの『雨だれ(Raindrop)』がBGMのように流れている。
雨の日だけ営業するという変わった店だが、この店でしか飲むことができない「レインティー」を目当てにやってくる客も多い。
世界各国の雨粒を取り揃えており、国によってその香りや風味が違う。それぞれ雲の形をした紙製のレインバッグに雨粒が入っている。
雫の形をした透明なガラス製のレインポットに、注文した好みの国のレインバッグを入れる。
レインポットの中で次第に雨粒がレインバッグから滲み出て、まるで雲から雨が降っているような景色が楽しめる。
そして数分後ーー。雨が降り止んで七色の虹が架かれば飲み頃なので、別名「レインボーティー」とも呼ばれている。
ただ、ここ数十年は味に問題があって、どのレインティーもレモンティーになってしまう。どうも酸性雨が原因らしい。
その他
公開:20/06/28 12:26
雨宿り ショパン 『雨だれ(Raindrop)』 レイン ティー 雨粒

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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