じゃれてくる、のらの雲

2
4

道端で雲をひろった。水分が足りず弱っていたから、数日家に置いて水をやった。

元気になった雲を放した翌日。日差しの強い7月の午後。

大学の帰り道、頬に水滴があたって顔を上げた。

一瞬ビー玉かと思った。
大粒の水が一斉に、遊ぶように落ちてきた。石畳で次々と水が砕け、光が四方へはじける。
日向の水の匂いがいっきに頭の高さまで立ちのぼった。

どしゃ降りの水飛沫。

夏の日差しを閉じこめた水玉が重なりあい、景色がかすむ。

通り雨だったのか、
空から落ちる飛沫はすぐにおさまった。

その時、見覚えのある形のした雲が視界に入った。
空気中にはまだ水分が溢れていて、両目に収まりきらない虹が涼しげに弧を描いていた。

なついたのか、それ以降も空によくあの雲を見かけた。
かわいいし虹を見せてくれるが、じゃれ方が半端じゃない。天気雨はいつも不意打ちで、服のままプールに飛び込んだようなありさまになる。
ファンタジー
公開:20/06/28 12:16
天気雨

字数を削るから、あえて残した情報から豊かに広がる世界がある気がします。
小さな話を読んでいると、日常に埋もれている何かを、ひとつ取り上げて見てる気分になります。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容