消えない夜

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都会は夜が早い。
空にはまだ光が残っていても、大通りでは白い外灯がつき橙色の電球が玄関を照らす。
そしてその灯りの周りから夜が沈殿していく。

日中は太陽が影を作るが、太陽が傾き光が薄らいでくると、人の作る灯りが陰の色を濃くする。
空が暗くなるより先に、人々の足元から闇がたまって夜が早まる。

眠らない都会では、人工の灯りがより多く、より長くともる。
次第に夜が早まるだけでなく、夜が明けるのも遅くなっていった。

昨今は街に溢れたたくさんの夜の粒子が、太陽の昇る時間になっても消えない。
空が青い光で満たされる真昼でも、人の多く住む街だけが夜に沈むようになった。

ルネ・マグリットの「光の帝国」。
あの絵画がこの夜の現象と関係があるのではないかと、いま話題になっている。
ファンタジー
公開:20/06/28 12:15
絵画

字数を削るから、あえて残した情報から豊かに広がる世界がある気がします。
小さな話を読んでいると、日常に埋もれている何かを、ひとつ取り上げて見てる気分になります。

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