ティ・ノエル２

ティ・ノエルは奴隷だった。公式には奴隷は存在しないことになっているが、そんな世界はこの世の王国にしか存在しない。
この島で奴隷たちの反乱がおき、その首謀者としてティ・ノエルは逮捕された。彼は魔術を使えると噂されていた。
提督はティ・ノエルへの尋問を始めた。
「お前は魔術を使えるそうだな。その魔術はだれから教わった」
「息子から聞いた」
「その息子はだれから聞いた？」
「そのまた息子から。魔術は子から親へと伝わる」
　面白いと思い、提督はさらに尋ねた。
「お前はメシを食うからクソをするのか。それともクソをするからメシを食うのか」
「ワシの体はクソである。メシもクソなら、お前もクソだ」
いきり立つ配下を抑えて、提督は宣言した。
「より深い尋問をするために、この男を本国へ連れて帰る」
数年後、ティ・ノエルは島国に戻ってきた。彼が解放されたのか、それとも魔術を使ったのかは、だれも知らない。