言氏37,8度

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うちの会社は毎朝の検温がルール。社風向上とか、うつ病対策とか。悪い事じゃないけど、私には悩みの種……。
「おっはよー!」(36,8°W)
「おはようございます」(36,4°W)
「はよ~っス」(35,2°W)
言温計(げんおんけい)。体温じゃなく言葉の温度(言氏°W)を測る機械。熱過ぎても冷た過ぎても調話を乱すから、『36,7°Wで話そう』が合言葉。
手に持って、挨拶しながら自分で測る。簡単な事なのに。
「ぉはようございます」(37,3°W)
これじゃ口論の言温。表現温度は低いのに、心部温度が変に高い。37,5°Wを超えると、頭を冷やすまで待機になっちゃう。
「緊張し過ぎ。貸して」
見かねた先輩が助けてくれた。
「目安だから気楽にね。……ま、ちょっと熱過ぎる奴の方が、俺は好感持てるけどさ」
「はい。ありがとうございます!」(37,8°W)
「……あれ?」
多分これは、私が貴方にお熱なせい。
ファンタジー
公開:20/06/27 09:33
タイトル原案: 小説『華氏451度』より

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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