売店のゴリラ

動物園で一躍人気が出たゴリラがいる。
彼の名は、タンバ。生まれた時からドラムの名手である。自分の胸はもちろん、ドラムを叩かせれば人間も驚くようなビートを刻む。
彼の定期ライブが注目を集め、動物園の客足は大幅に伸びた。
まさに客寄せゴリラだ。
しかし、ドラムの叩きすぎで腱鞘炎になったため、バンドマンとしての活動を断念。
ライブがなくなって周囲は落胆したが、それでもタンバはめげない。
園長のはたらきかけで、売店のアルバイトをすることになった。
第二の人……ゴリラ生の幕開けだ。
タンバは勉強熱心で、接客用語をすぐに習得した。人間の言葉を話すゴリラとしてここでも大注目される。
案の定、タンバがシフトに入ってからは売店の売上が急上昇。
彼はサービス精神が旺盛でもある。お客さんに自慢のドラミングを無理しない程度に披露してくれるのだ。
その衝撃で、売店の位置が左右に少しずつずれてしまうのは玉にキズだが。