街の端、無愛想な猫と

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自分が死んでから、だいぶ経つ。成仏できずにさ迷いはじめてから、だいぶ日が経っている。
透明の存在。無意味。
道行く人々は自分になど目もくれずに生活を営み、誰の関心も得られずに日々は過ぎる。晴れも雨も今の自分には関係なく、ただ雑踏を眺めながら、日々を過ごしている。ーー無愛想な猫と一緒に。

無愛想な、半透明の、おそらくは同じ霊と思われる、猫と一緒に。

「......」
「......」

街の喧騒。活力のある賑やかさ。
自分と猫はその片隅に並んで座り、目的もなく光景を眺めている。馴れ合いも、互いを癒すための触れ合いもなく。遠く離れてしまった世界を、ただ別々に見つめている。たまの視線の交錯を唯一の交流として。隣り合うことを、別離を望まない唯一の証として。

ーー無愛想な猫。君は、僕との別れを悲しんでくれるだろうか。それとも、喜んでくれるだろうか。

自分と猫は、今日も世界の外側に座っている。
その他
公開:20/06/26 22:14
更新:20/06/26 22:15

徳田マスミ

ショートショートを好むのです。
コメディからブラックまで、色んな話を書きたいと思います。

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