月人の涙

私は空に浮かぶ故郷を見上げた。

「発射10秒前、…５、４、３、…」

その瞬間、大きな衝撃とともに宇宙船が破壊された。

斧を持った老人が現れ、私は囚われてしまった。

(あぁ、殺されてしまうんだ。)

そう思うのも束の間、老人はとても親切で私のことを大切に扱った。私に着るものを用意し、食事を与えた。

私は仕方なく、ここで生活することにした。

ある時、若い男たちがやってきて私と結婚したいと申し出てきたが、私が拒否すると同居している老人も一緒になって彼らから私を守ってくれた。

長い年月が過ぎ、ようやく月から救助隊がやってきた。
老人は涙をながして私を見送った。

ただ一緒に生活をしただけなのに、どうして涙を流すのか、その時は理解できなかった。

月に戻ってから、あの頃の生活を思い出すと自然と涙が溢れ出す。

周りは何かの病気だと騒ぎ立てるが、なぜだか胸が熱くなってしまうのだ。