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小学校の頃、私は死に憧れていた。小学校入学直前に母を亡くしたからだ。
父からもう母に会えないと聞かされ、凄く悲しかったあの頃。どうにか母に会う方法はないかと探している時に見つけたのが百物語である。
怖い話が沢山書かれた難しい本。この本を読みきれば、本の中から幽霊が出てくると聞いた。
だから百物語を読み始めた。怖い話もあれば、意味の分からない話もある。私によく似た子供の話もあった。
その子も死んだ母に会う為、百物語を読み始めたという。私はいつしかその子に自分を重ねていた。
その子のもとには毎夜、母の幽霊が現れるらしい。羨ましいと思った。
しかし、話を読み進めるとその幽霊は母の姿をした悪霊だと判明した。その子は悪霊と分かっていながら母の手を取り、死を選んだ。
その結末に私は冷めた。私の母はこんな事をしない。
本をゴミ箱に放り込むと「もう少しだったのに…」と母に似た何かの声が聞こえた気がした。
ホラー
公開:20/06/25 18:53

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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