水面の好敵手①

中学生の時、初めて彼と出会った。
それ以降、彼と出くわさなかった日はないかもしれない。

毎日のように夜の水面から姿を現す彼と死闘を続けるうち、いつしか互いの実力を認めるようになり、最近では友情のようなものまでうっすら芽生えてきた。

歴戦の好敵手。

まぁ相手は陰毛なのであるが、そんな彼が今日も懲りずに浴槽の湯に浮かんできたのである。

彼はこちらを確認し、「よう、来たぜ、今日も一戦やろうや」と不敵な笑みを浮かべる。

締まりの緩いシャワーから水滴が落ちる。
開戦のゴングである。

僕の手は素早く水中へと侵入し、魚雷のようにグングン彼めがけて突き進んでいく。
ここだ！

握った手の平を開き、中を確認した。
彼の姿はない。
浴槽を確認すると、彼は「今ので全力？」とでも言いたそうにスイスイと泳いでいる。

まさか。陰毛のくせに見くびってもらっては困る。
今のは小手調べだ。