ソーマ灯

　部屋に違和感があるとき、ソーマ灯を使う。白馬に縦縞に色付けされた陶器の置物で、大きさは猫くらい。カラフルなシマウマのようだ。魔除けとして居間に飾ってある。
　背中に燭台があり、必要なときに蝋燭を立て、火を灯すのだ。必要なときとは、部屋に魔物がいるときだ。
　私は、幼い頃から魔物に取り憑かれやすかった。
　これは叔父から譲り受けたもので、叔父が亡くなるひと月前のことだった。叔父はそんな私を心配して、ソーマ灯を譲ってくれたのだろう。
　ソーマはインドの神様と聞く。その神様が、魔物退治をしてくれるのだ。
　火を灯すと、ほとんどの魔物は、その存在に慄いて立ち去るが、たちの悪い魔物は居座る。
　すると、ソーマは全身に青白い炎を纏う。抜け殻のように炎だけが浮き上り、青い閃光を放って駆け巡る。
　その炎で魔物たちを焼き尽くすのだ。
　私は、それを蚊取り線香ならぬ、魔取り閃光と呼んでいる。