望演鏡

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 ある日、おじいちゃんに、“望演鏡”というものをもらった。おじいちゃんは言った。
 「使い方は簡単。物語の最初のページを開いて、レンズをそこに向けて、覗けばいい」


 さっそく、使ってみることに。覗いたら、なにが見えるんだろ…。ドキドキと胸が弾むのを感じる。
 物語か…なににしようかな。壁一面の本棚を眺めながら、あれこれと考える。これにする!そう決めて、とっておきの物語を手に取る。


 物語の最初のページを開く。そして、レンズをそこに向け、覗き込む。すると…。



 お腹を空かせた一人の男が、“そば屋”の暖簾をくぐろうとしている。蕎麦を注文しようとするが、そこは、“蕎麦屋”ではなくて…。



 レンズの向こうでは、僕が初めて書いたショートショートが上演されていた。
 男の容姿も声も、仕草も。僕の思い描いていた通り。




 望み通りのものを上演する…それが“望演鏡”の不思議な力。
その他
公開:20/06/23 22:34
望演鏡と書いて ぼうえんきょう

すみれ( どこか。 )

書くこと、読むことが大好きな社会人3年生。
青空に浮かぶ白い雲のように、のんびり紡いでいます。
・プチコン「新生活」 優秀賞『また、ふたりで』
・ショートショートコンテスト「節目」 入賞『涯灯』



note https://note.com/sumire_ssg

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