命どぅ宝

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75年前の約束。
それは戦死する少し前。
偶然、幼馴染の幸子と再会した。
「さっちゃん、戦争終わったら……終わったら、一緒に映画観に行こう」
「昇くん……うん!」
僅かでも、焼き付けるよう見つめ合った。
だがそのすぐ後、僕は鉄血勤皇隊として斬り込み攻撃を命じられた。

魂は天国で浄化されるが、スピリッツロンダリング装置前は世界中の魂で大渋滞。
流れ作業で装置に入れられた魂は、深く刻まれた何かの影響か、60年後に転生しても前世を覚えている。

平和の礎に刻銘された僕の前世の名前。
一人のおばあさんが「昇くん」と言いながらそれに手を置いていた。
「さっちゃん!?」
「はい。え、どちらさん?」
「昇だよ。信じてもらえないと思うけど……映画!映画観に行く約束したでしょ?」
さっちゃんは僕を信じてくれた。
優しい笑顔に涙が流れる。
きっと信じたいのだろう。僕が昇だと。
「やっと終わった。私の戦争」
その他
公開:20/06/23 21:48

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