いとしのベンチ

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ベンチが泣いていた。
ベンチとは横に長い椅子の形状をした腰掛けの事である。
私は腰掛けようとして気付いた。脚が折れかけていたのだ。ベンチに触れると発熱していた。高熱だ。これはまずい、と私はホームセンターへ走った。
とにかく必死だった。木材で脚を補強し、氷枕でベンチ全体を冷やし、一晩中そばにいた。
その甲斐もあり、翌日には見違えるほどイキイキしていた。その姿に惚れ込んでしまった私は、ベンチと付き合い始めたのだ。
ベンチは常に私を優しく包み込んでくれた。夏には冷たい体で涼ませ、冬には温かい体で暖めてくれるのだ。春にはお花見をし、秋には読書をする。私たちは年中ラブラブだった。

あれから数年。この冬、ベンチは冷たいままだ。夏頃から様子がおかしかった。病気だったのかもしれない。ベンチはもう……。

見上げた空は、涙と煙で滲んでいた。最期の炎が別れを惜しむように、冷えた私の心をほんのり照らしている。
その他
公開:20/06/23 21:12
温度のあるベンチ スクー

壬生乃サル

まったり。

2021年…11本 (7/7時点)
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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