ベンチと私の物語

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夕闇迫る公園のベンチで俯く私。半年間ツキ合った彼氏にフラれた。思わず涙が溢れる。

「……元気出して」

どこからか声。しかし、人の姿はない。すると、座っていたベンチが不意に温かくなった。

「あの……私、ベンチです」

びっくりして立ち上がる。

「二十年間、いろんな光景を見てきました……あなたのような別れも数多く。実は私、来週撤去されるんです。これが私の見守る最後の涙かもと思ったら、言葉が……」

私はそっと座り直した。ベンチは私を柔らかく包む。二人でいろんな話をした。

「あぁ、あなたみたいなベンチが彼氏なら……」
「私が人間なら……」

二人は願った。すると、光が降り注ぎ、気がつくと人間になったベンチが私を後ろから抱き締めていた。


「何それ!奇跡!」
ママ友が驚く。
「でも、そんな運命的な出逢いなのに、今じゃすっかりかかあ天下よねぇ」

私は答える。

「そりゃ、尻に敷くわよ」
その他
公開:20/06/23 20:00
更新:20/06/23 20:03
スクー 温度のあるベンチ

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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