アリとキリギリス

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 食料を背負ったアリの恨むようなまなざしが、キリギリスは忘れられなかった。
「冬のことは冬になってから考えればいい」
 そう信じてキリギリスは歌って遊んで暮らしてきた。しかし、アリを見ていたら、考えを改めるべきかもしれない、と感じたのだった。
「でも、冬に備えて食べ物を貯めようとしても、僕の食べ物はみんな腐っちゃうし……」
 キリギリスは歌いもせず、踊りもせず、長い時間考え続けたが結論は出なかった。やがて冬になりキリギリスの食べ物はなくなってしまった。
 飢え死に寸前のキリギリスは最後にアリの家へ向かった。
「ここにあなたが食べる食べ物はありません」
「僕は遊んでばかりでしたものね」
 悲しそうにアリは言った。
「違うんです、本当にないんです。食べるものが違う。貴方は私たちと違って冬を越せない種なんです」
「ではなぜあの時、恨むように睨んだんですか?」
「情が……移ってしまうので……」
ファンタジー
公開:20/08/27 15:00
更新:20/06/23 17:20

ゆぅる( 東京 )

お立ち寄りありがとうございます。ショートショート初心者です。
拙いなりに文章の面白さを追求していきたいと思って日々研究しています。
よろしくお願いします!

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