恋したっていいじゃない

好奇心旺盛で、多感で、とってもせっかちな少年がいる。

慌てて飛び起きて目覚まし時計を壊したり、さらに慌てて靴を履かずに飛び出しちゃったり。ちなみによく転ぶ。

他人と同じことをするのが、少年は嫌いだ。「流行に流されたくない」が口癖。だからスマホは持たない、ＳＮＳもやらない。バイトで貯めたお金は映画や小説に費やしている。

いま少年は、電話ボックスのことが気になっている。

たまたま古い映画で、主人公が電話ボックスの中で着替えてヒーローに変身するシーンを見たのがきっかけ。そしてその「箱」はその昔、遠く離れた誰かと街の中でつながれる唯一の場所だったと知った。

そんな時代、あったんだ。デートするのも待ち合わせも大変だったろうな。

でも、そんな時代だからこそ、会いたかった誰かと会えた時の嬉しさ、格別だったろうな。

電話ボックスが大切な空間だった時代のドキドキ感に、多感な少年は憧れる。