アップルパイがいっぱい

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「あら、アップルパイがいっぱい」
 仕事から帰ってきたお母さんが軽く驚く。
「彼氏にプレゼントしようと思って」
「よく作ったわねぇ」
 ダイニングテーブルの上には総勢十五個のアップルパイが並べられている。
「お母さんも一緒にこのアップルパイ食べようよ。私、お茶淹れるね」
 包丁を使って丁寧にアップルパイを切り分ける。サクッという音が食欲をくすぐる。とてもお腹が空いていた。
 お茶の準備をして、私とお母さんはそれぞれ自分の椅子に座った。
 私達はアップルパイを頬張る。
「ん、美味しい! 美味しいアップルパイを作れる彼女がいるって男は幸せだよね」
「甘いもの苦手な男はダメダメよ」
「そういう男、選ばないよね。で、お母さん、いくつ持ってく?」
「そうねぇ」

(アップルパイ一個→私たち家族の)
 アップルパイ八個→お母さんの
 アップルパイ六個→私の

 まじで悔しい。彼氏の数、また負けた。
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公開:20/06/24 10:30

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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