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大きく蛇行する川の内側に耳朶が堆積している川原があり、耳朶川原と呼ばれている。事故の多い川原なので立入禁止なのだが、そこを裸足で歩くぷにぷに感が絶品だと、訪れる人は後を絶たない。俺もその一人だった。
ぷにぷにを堪能した俺は、足元の一枚を拾い、何気なく右耳に当ててみた。
するとヘチャッツッという音がして取れなくなった。そしてものすごくうるさい。俺は耳鼻咽喉科へ駆け込んだ。
「あー駄目ですよ。だから立ち入り禁止なんですから」
医師は慣れているようだった。
「じゃ、とってください」
「取れませんよ。癒着が進んでいますから」
「え?! じゃどうすれば……」
「方法は二つ。一つは放射線で体中に小さく散らすことですが保険適用外です」
「あの、もう一つは?」
「こちらの耳にあなたが吸収再組織され、本来のあなたの耳が剥落するまで待つ。ま、自然治癒ですな。どうします?」
自然治癒には三年を要した。
ぷにぷにを堪能した俺は、足元の一枚を拾い、何気なく右耳に当ててみた。
するとヘチャッツッという音がして取れなくなった。そしてものすごくうるさい。俺は耳鼻咽喉科へ駆け込んだ。
「あー駄目ですよ。だから立ち入り禁止なんですから」
医師は慣れているようだった。
「じゃ、とってください」
「取れませんよ。癒着が進んでいますから」
「え?! じゃどうすれば……」
「方法は二つ。一つは放射線で体中に小さく散らすことですが保険適用外です」
「あの、もう一つは?」
「こちらの耳にあなたが吸収再組織され、本来のあなたの耳が剥落するまで待つ。ま、自然治癒ですな。どうします?」
自然治癒には三年を要した。
その他
公開:20/06/24 09:18
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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