温度のあるベンチ

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俺は社内でも屈指の営業成績を誇るコンサルタント。

最近の日課といえば、お昼休みに公園のベンチでゆっくりすることだ。

年季の入った茶褐色のベンチ。

不思議なもので、腰掛けると
前に座っていた人の残像が現れる。

就職活動に奔走する女子大生。
旦那に先立たれて生きがいを探すお婆ちゃん。
失恋して肩を落とす男子高校生。

このベンチで俺がみんなの悩みを聴いてあげる。

すると、残像はほっこりと温かい笑顔になり消えていくのだ。

人助けをしているようで、とても気持ちがいい。

「さて、今日は誰かな?」

例のベンチに腰掛けると、緑色の帽子につなぎを着た青年が隣に現れた。

「やぁ、君は何してる人だい?」
「おいらはペンキ職人だ」
「おぉ、体力勝負の仕事だね。今日はどこで作業を?」
「それが、さっきまでこのベンチを塗っていてさ」

以来、俺が悩める残像軍団に
ベンチ入りしたのはいうまでもない。
その他
公開:20/06/24 00:48
更新:20/06/24 13:56
スクー 温度のあるベンチ 公園

モリソン( 名古屋 )

名古屋の会社員兼執筆家です。
普段は54字の物語をメインに書いていますが

ショートショートの魅力にもハマったので
皆様を参考にこれから様々な作品にも
チャレンジしていきたいです(^o^)

よろしくお願いします!

得意ジャンル
・言葉遊び系
・会社員系
・ファンタジー系

挑戦したいジャンル
・SF系
・恋愛系
・ミステリー系

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