3.ガソリンスタンドバイミー

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あれは十二歳の夏。
長い線路を僕は歩いていた。
この先に【したい】があると親が教えてくれた。したいことのない僕はその通りに歩いた。
時にヘビーに睨まれ、時に危機感車に急かされ、ガス欠寸前の僕の前に君が現れた。
君は僕の涙を拭き、心の吸殻を掃除し、元気を給油してくれた。
『沼を軽油しない?』
道なき道を示す君。
『イレギュラーも悪くないさ』
怖かったけど、僕のエンジンは唸った。
翌朝、僕は森の中を君と一緒に進んだ。
沼でヒルに噛まれると君が体を洗車してくれた。
『オーライ!』
いつも君が励ましてくれて心強かった。

遂に【したい】を見つけた。
線路をずっと歩いてきた末に押し潰された誰かの死体だった。
これが僕のしたいこと?
『君のしたいこと、本当はわかっているはずだ』
あっ……自分で蓋をした給油口を僕は思い出した。君はそこに勇気を満タンに給油してくれた。
ガソリンスタンドはもう動かなかった。
ミステリー・推理
公開:20/06/22 22:08

そるとばたあ( 神奈川 )


☆そるとばたあの400字SSは、『ミュージシャンが曲を作るように物語を描く』をコンセプトとしております。
ことば遊びと文章のリズムにこだわり、音を体感できる物語に挑戦中です!


☆拙作のプレイリストを選んでいただきました!
気になられた方は、↓の過去作品も一緒に楽しんでいただければと思います!




【This is そるとばたあ selected by むう】

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