空耳

最近、耳がむずむずする。触ってみるとぐらぐらしている気がする。なんか怖い…
心配になって父に相談してみた。
「ちょっと見せて」と言われ、長髪をかき上げて耳を露にした。
父は耳に触れると「えいっ！」と言って私の両耳を引き千切ってしまった。
ちょっ！何て事するの！
「大丈夫、今抜けたのは乳耳。すぐに永久耳が生えて来るよ」
父の言葉にぽかんとする。永久耳って何？
「歯が生え変わるみたいに耳も一度生え変わるんだ。ハッピーニューイヤーってね」
ダジャレかよ！と思わずツッコんでしまった。
取れた乳耳を見る。それは左耳と右耳がくっつくと蝶のような形となり、空へと飛んで行った。
「ああやって聞き間違いの妖精・空耳は生まれるんだ」
飛んでいくそれを見送った私は父に聞いてみた。あれを家で飼う事は出来ないの？
妖精と聞き、私は目を輝かせた。
「そんな事をしたらお前が耳年増になってしまう」と父は苦笑いを浮かべた。