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「わさおが死んだのかぁ」
「かなしい?」
「かなしいけど」
「けど」
「みんないつかはいなくなる。雪が溶けるように」
「さびしい」
「うん」
「こうちゃんは溶けないで」
「俺はまだ溶けないけど」
「けど」
「うまそうだよな」
「なにが」
「イカ焼き」
「なんでイカ焼き」
「わさおはイカ焼き屋で飼われてたんだよ」
「へえ」
「イカ焼き。想像してみろよ」
「バター醤油だよね。じゅわー」
「食べたいだろ」
「食べたいけど」
「けど」
それで彼は眠ってしまった。私が答える前に。私の太ももで。
寝息がかわいいこうちゃんの、鼻のあたまに吹出物がある。
先端の白い部分を指先で触れてみるとサクッと音がして、雪崩のようにひんやりと冷たいものが滑り落ち、それは私の指先で、溶けて水になった。そう。残雪だ。
私はこうちゃんが溶けてしまわないように部屋を冷やした。
天井から雪が降りはじめたら、抱きしめてもいいよね。
公開:20/06/23 15:14

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