【手】

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 言葉はいつしか補佐の枠を超えて、画面の向こうの誰かを攻撃する武器になっていた。このままだと共食いが起き国が成り立たなくなると考えた政府は、誰も傷付かない社会を作るために『誰かを傷付ける可能性がある言葉』を排除する【手】の着用を国民に義務付けた。
 【手】は国民一人一人の心に装着された。発することを許されなかった言葉は【手】によって奥に押し戻され、それぞれの中に溜まっていく。社会から会話は消え、言葉と自我を失った代表者は町を彷徨い、上手く変換できなかった者は次々と自らを諦めていった。順番待ちの列の上で、烏が嘲笑うかのように「コッケイコッケイ」と鳴いていた。
『こんな手なんか、』
 気が付いた時にはもう手遅れだった。今はもう、その先の言葉を思い出せる者はほとんどいない。この国は【手】に言葉を支配され、失ったのだ。

 そしてここは後に『無ノ国』と呼ばれるようになるのだが、それはまた別の話。
その他
公開:20/06/23 13:26
言葉を優しく使いたい 滑稽、滑稽 なんだか暗くなっちゃったなぁ

久寓

(玖寓→久寓に変えました)

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