染料の秘密

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小さい頃、校外学習で染物工場に行った。工場は機械がせかせか動いているだけで、子どもにはつまらなかった。
そんな子供たちの気配を察したのか、工場長は内緒で染料作成の現場を見せてくれた。
重厚な扉を開けたその先には、小瓶がずらっと並んでいる。私は驚いた。だって、その全部にちっちゃな虹が入ってたんだもの。
工場長は「これはね、きぎょうひみつなんだよ」と言って人差し指を口に当て、私たちをさらに奥まで連れて行ってくれた。そして扉の前で私たちに「びっくりしちゃうから耳をふさいでね」と言った。
扉を開けた瞬間、色んなところから大きな爆発音がした。よく見ると、瓶の中で虹が爆発し、粉々になって鍋に注がれていた。
「色はね、虹からできているんだよ。」
工場長はそう言ってたくさん説明してくれたけど、もうほとんど忘れてしまった。
ただ、この世の物とは思えないくらい鮮やかなあの光はいつまでも私の目に焼き付いている。
ファンタジー
公開:20/06/23 10:00

竜泉寺成田

物書きを目指している大学3年生です!
noteで短編を、Twitterでは140字小説を毎日投稿しているのでよかったら見てってください〜!!
ショートショートガーデンは思いつき次第更新します!難しい!いつかさわやかな作品を書きたい!
楽しんでもらえたら幸いです〜。
note:https://note.com/ryusenji_narita
Twitter:@ryusenji_narita

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