寂れた商店街

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「おばあさん、今日はここなんですね。いいんですか?勝手に入って」
おばあさんの煙草屋は商店街で唯一営業しているお店。
しかしそれをいいことに、空いている場所に商品を持ち込み店ごと移動するようになった。
今日はかつてのコロッケ屋があった場所、昨日はその隣にあるカフェだった場所だ。
「いいんだよ。この商店街はお役人さんに見捨てられてるからね。それに日々新しい環境に身をおかないとボケてしまうから」
僕はそれは本音ではないと知っている。
おばあさんは、店をたたむしかなかったかつての仲間のために代わりに営業しているのだ。
そして僕は毎日ここにやってくる。
おばあさんが最後の売店なら、僕は最後の客だ。
「それじゃあいつもの一つとライター」
「はいよ」
僕は今日も吸えもしない煙草を買って帰る。
その他
公開:20/06/23 00:00
更新:20/06/23 00:00
スクー 左右にずれる売店

田坂惇一

ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
悪口でもちょっとした感想でも、コメントいただけると嬉しいです。

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