命の花

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裏庭に咲く小さな花

お姉ちゃんが言っていた。この花は春を運んでくるのだと。

長い長い冬が明けるとその花は裏庭にやってくる。

春の訪れを鮮やかに教えてくれる。


お母さんが言っていた。この花は幸せを運んでくるのだと。

お母さんとお父さんは春に家族になり、お姉ちゃんも私も春に生まれた。

花が咲くたびに、幸せの時を刻んでいく。


おばあちゃんが言っていた。この花は命を繋いでいるのだと。

この場所で、凍てつく氷のように冷たい心が人々を殺していた。

悲しい悲しい時代があった。

ただ、どんなに冷たい雪に覆われていても、雪が溶けたら春がやってくる。
花が命を繋ぎ、春をもたらす。

悲しみも寂しさも、命のつなぐ営みの中で、春という喜びの花となる。


私は言います。この花は、過去から未来へと人々をつなぐ強い強い絆であるということを。


その花は今年の春も裏庭に小さく咲き誇る。
ファンタジー
公開:20/06/20 23:51
更新:20/06/20 23:53

さくまりこ

音楽、美術、読書好き。最近書く方にもチャレンジしてます。
歴史とファンタジー、評論など幅広く読みます。

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