夏と私
6
6
退屈に辟易して吐かれた溜息は、天上に跳ね返されて少し砕けた。電気の傘に糸でぶら下がる蜘蛛がそれに狙いを定めている。落ちてくるその欠片はベッドに寝そべった私の身体を意地悪に突く。痛みはないけれど、私の中で増幅する空虚は胃を圧迫して、吐き気を催させた。
込み上げる胃液を飲み込む。気持ち悪い。なんて気持ち悪いんだろう。
夏祭りで盗んだりんご飴、こっそり忍び込んだ小学校のプール、無免許で運転する兄の車、寄せる波に濡らすお気に入りのビーチサンダル。
あの頃の私はもう居ない。どうせなら夏に溶けて消えたかったのに。
どうでもよかった人の目が気になり始めたり、過ぎ行く日々に意味を見出そうとしてみたり、正しさが何かと疑問を持ち始めたり。
そんなの私じゃないのに。
もっと自由に、ただ気持ちよさを求めていたはずなのに。
破り捨てたあの頃の私をテープで繋ぎ合わせる。
夏の終わりに間に合ってと願って。
込み上げる胃液を飲み込む。気持ち悪い。なんて気持ち悪いんだろう。
夏祭りで盗んだりんご飴、こっそり忍び込んだ小学校のプール、無免許で運転する兄の車、寄せる波に濡らすお気に入りのビーチサンダル。
あの頃の私はもう居ない。どうせなら夏に溶けて消えたかったのに。
どうでもよかった人の目が気になり始めたり、過ぎ行く日々に意味を見出そうとしてみたり、正しさが何かと疑問を持ち始めたり。
そんなの私じゃないのに。
もっと自由に、ただ気持ちよさを求めていたはずなのに。
破り捨てたあの頃の私をテープで繋ぎ合わせる。
夏の終わりに間に合ってと願って。
その他
公開:20/06/22 06:21
夜野 るこ と申します。
(よるの)
皆さんの心に残るようなお話を書くことが目標です。よろしくお願いします。
ログインするとコメントを投稿できます