亡き父と僕ら。

本格的な夏の始まる境目にある夏至。
日照時間が長くなるだけで、やる事はいつもと何も変わらない。
僕はご飯を食べながら、何気なくテレビをつけた。
「──今日は、父の日！皆さんはお父さんに何をあげますか？」
画面の向こう側で、父の日の特集VTRが流れる。僕は目を逸らし、虚しく置かれた父の仏壇を見た。父は去年10月に38歳で死んだ。
「お兄ちゃん、父の日だからお父さんにラムネ買おうよ！」
塾の宿題をしていた兄は、ペンを置いて鞄から財布を取り出した。
「俺、150円しかないよ。あと、50円玉ないと買えないや」
僕は貯金箱から50円玉を取り出し、兄に渡した。
「よし、父さんのとこに行くぞ！」
僕らはラムネ一瓶を買い、近くにある父の墓場まで走った。
「あのね、僕とお兄ちゃんでお父さんにプレゼント買ったんだ！」
墓石に静かに買ったばかりの瓶を置く。僕らは、父に手を合わせてその場を後にした。空はまだ青い。