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「お一つどうぞ」
爪楊枝に刺してあったのは、ピンクの花だった。
商店街の花屋の店先。若い子が人当たりの良い笑顔を浮かべている。
「試食、どうぞ」
どうぞと言われても、受け取りをためらう。見た目には綺麗だが、花を食べてみたいとは思わない。
「飴細工か何かですか?」
「コンペイトウアジサイです」
答えになっている様な、なっていない様な。爪楊枝の先を凝視する。尖った八重の花びらが、確かにコンペイトウに似ている。いかにも甘そうなピンクの濃淡。
「……いただきます」
口の中で、花びらがさくりと砕けた。舌に淡い甘みと、懐かしい様なほろ苦さが広がる。空に向かって口を開けた、昔の雨の味だと思った。
「もう一つどうぞ」
今度は青い花を、さくり。
顔をしかめた。あまりの酸っぱさに舌が痺れる。
「アジサイは移り気で、色も味もよく変わるんです」
人の悪い笑顔で、花屋の子が舌を出した。
「それに、青は酸性ですから」
爪楊枝に刺してあったのは、ピンクの花だった。
商店街の花屋の店先。若い子が人当たりの良い笑顔を浮かべている。
「試食、どうぞ」
どうぞと言われても、受け取りをためらう。見た目には綺麗だが、花を食べてみたいとは思わない。
「飴細工か何かですか?」
「コンペイトウアジサイです」
答えになっている様な、なっていない様な。爪楊枝の先を凝視する。尖った八重の花びらが、確かにコンペイトウに似ている。いかにも甘そうなピンクの濃淡。
「……いただきます」
口の中で、花びらがさくりと砕けた。舌に淡い甘みと、懐かしい様なほろ苦さが広がる。空に向かって口を開けた、昔の雨の味だと思った。
「もう一つどうぞ」
今度は青い花を、さくり。
顔をしかめた。あまりの酸っぱさに舌が痺れる。
「アジサイは移り気で、色も味もよく変わるんです」
人の悪い笑顔で、花屋の子が舌を出した。
「それに、青は酸性ですから」
ファンタジー
公開:20/06/21 23:59
更新:20/06/22 00:20
更新:20/06/22 00:20
画像はアジサイ『コンペイトウ』
(※品種名。色はピンクです)
アジサイは土壌酸性度(pH)で
花色が変わり、酸性で
青みが強くなります。
注意!アジサイは観賞用です。
有毒成分も含みますので、
決して食べないで下さい。
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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