空耳

ペットは飼い主に似るというが、猫に関しては人が猫に似てきたのだと私は思う。
子猫は愛らしい。人の赤ちゃんだって同じだ。どちらも目が離せないし、油断したらすぐどこかに行ってしまう。
大きななき声で私を呼んでは、抱きしめてあげると安心して眠りにつく。
成長するにつれ、好奇心も旺盛になる。怒られる事を何度もやっては私の気を引きたがる。
食事が気に食わないと文句をつけてくる。やれやれ…何でこんなに手のかかる子どもになったのやら…
成長し、大人に近づいてくると私を無視し始める。
呼んでも返事をしない。迂闊に触れようものならすぐに噛みついてくる。その距離感に誰もが悩むはずだ。
そんな関係が変わるのは歳を取ってからになる。
猫は歳を取ると子供のように甘えてくる。
サイレントニャーと呼ばれる、声なき声を出してくる。
親はその空耳を聞き逃してはいけない。人も猫も、子供はいつだって素直になれないのだから。