タイムマシン家族

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「ほら、ちょっと面影があるでしょう」と、彼女は私に生まれたばかりの赤ん坊を見せてくれた。
子どもとひとりで生きていくことに決めたのだという。
「再婚はしないの?」
「うん。今のところはね。それに」
「それに?」
「今のあなたを見てホッとしたわ。
自分の選択が間違ってなかったって」
彼女はそう言って笑った。
「それじゃ、しばらく預かるね」
私は彼女から赤ん坊を受け取った。
「本当にいいの? 迷惑じゃない?」
「いや、喜ぶよ。向こうの母も」
「また時々顔を見せてね」
こうして私は戻った。25年後の実家に。
「おかえり。久しぶりね」
年老いた母は、うれしそうに赤ん坊を抱き上げた。
「手のかかる時代って辛かったけど、あっという間に過ぎちゃうのよね」
私は毎年母の日にはこうして顔を見せることにしている。今の母と、かつての母に、元気でいるよ、と。
SF
公開:20/05/05 05:45

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