ある箱

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 とある学者が自分だけは死にたくないと不老不死の研究に勤しんだ。
 研究は成功せず、貧しくなり、妻子が飢えたが知ったことではない。
 ある朝、「できた! 思っていた物とは違うが自分だけ死ぬことはない」と喜びの声が響いた。
 自分が死んだら箱を開けるよう息子に伝え、数日後息を引き取った。
 息子は『開けた途端親父が蘇るのだろう。俺の時にしよう』と箱を開けなかった。
 学者の家には代々箱が受け継がれた。

 時は流れ、箱のいわれさえ分からなくなった頃、たまたま手にしたものが箱をあけてみた。
 そこには『自分だけでは死にたくない』といった手紙と爆弾が入っており、数秒後それが爆発した。
 荒廃した大地の上で箱を手にしたアンドロイドが立ちすくみ呟いた。
「一体何が起こった。周囲も元のままだし理解が出来ない。人間というものは高い知能を持ちながらなぜ滅んだのだろう。一人でも生きていれば謎がとけたものを」
SF
公開:20/05/05 04:46
更新:20/05/10 14:47

牧原加奈( 大阪府 )

牧原加奈です。
よろしくお願いします。

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