戸棚の家族

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「いよいよ今日だぞ」ニポポの夫婦が顔を見合わせて頷く。
博多人形のお姉さんは「どんな方かしらね」と微笑み、すっかり懐いたさるぼぼの赤ちゃんを抱き上げた。
赤ベコじいさんが皆の会話にウンウンウンとうなずく。

ご主人が連れて帰る新しいお土産、それがどんな姿であっても、この戸棚の中に置かれれば私たちは家族だ。

「ただいま」
来た!
全員が期待と緊張の面持ちで見守る。
帰宅したご主人は戸棚を開けると、そこに並ぶ人形たちを順番に大切そうに撫でた。
そしてその横に新しい人形をそっと置いた。

丸い木彫りに描かれた女の子。こけしだろうか。

戸棚の扉が閉まると、ニポポ妻が「こんにちは」と声をかけた。
その子はゆっくりこちらを向いて。

首元がパカッと開いた。
皆がギョッとして目を見張る。
その中から一回り小さな別の顔がそろっと覗き、その首もパカッと開くと中から小さな顔がもう一人。

マトリョーシカ!
ファンタジー
公開:20/05/05 03:28
更新:20/05/05 03:31
#〇〇家族

ケイ( 長野 )

ショートストーリー、短編小説を書いています。
noteでも作品紹介しています。​​
​​​​​https://note.com/ksw

テーマは「本」と「旅」です。

2019年3月、ショートショートコンテスト「家族」に応募した『身寄り』がベルモニー賞を受賞しました。(旧名義)
2019年12月、渋谷TSUTAYAショートショートコンテストに応募した『スミレ』が優秀賞を受賞しました。
2020年3月、ショートショートコンテスト「節目」に応募した『誕生会』がベルモニー賞を受賞しました。

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