私と鴨と横穴古墳

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人の声や人の熱から逃げ出したくなり歩き出した。人が来れば曲がり、また人が来れば曲がり歩き続けた。
辿り着いた先は等々力渓谷。
まさに追い求めていた場所だった。
しかしよく見ると木々達の隙間からレジャーシートを広げた人間が大勢いる事に気付いた。
ここではない何処かへ。

案内板には横穴古墳と書いてあった。
ここだ。私は古墳へと急いだ。
高らかな階段を登りきった私は、神にでもなった気分で地上を見下ろした。
すると、下の方から視線を感じた。
そこには鴨があくびをしながら寛いでいた。何かから逃げ出したくなったかの様な鴨は私と同じ様に思えて嬉しくなった。しかし二人だけの時間はそう長くは続かなかった。誰かの足音。少女が鴨を見つける。追いかける少女。鴨は私を見た。そして首を激しく振ったあと大空へと飛び立った。
自分と同じだと思っていた鴨が勇しく高らかと飛んだ事が私を少し惨めにさせた。さぁ家へ帰らなきゃ。
ファンタジー
公開:20/05/05 01:44
更新:20/05/05 01:48

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