フラットな家族

　音楽の時間、合唱が嫌いだった。楽器はまあまあできる方だけど、歌がどうも苦手で。どうも僕には、絶対音感どころか相対音感さえもないらしい。要するに音痴ってことだ。一緒に歌っている子からよく「あそこでちょっと音、外したでしょ！」って怒られる。すぐに半音低く（フラットに）なっちゃうんだ。
　考えてみれば、うちの家族にはどこかフラットなところがある。競泳で活躍している弟はこの間も「11秒フラット」だったと自慢していたし、いつも風呂上りに鏡の前で「胸囲の格差社会！」とか叫んでいるやせ型の姉の胸は、家族のひいき目で見ても確かに残念なことになっている。
　最近、競馬にはまっている母が応援している馬はフルフラットだし。
「後頭部がフラットだから、枕無しでどこでも寝られる」と得意がっている絶壁頭の父は、座席がフルフラットになるから車中泊ができるぞと、買ったばかりの車でフラッと出かけたまま帰ってこない。