植物家族

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一人暮らしの寂しさから僕は妻の種を庭に植えた。
数日後、土から顔が生えてきて少しすると瞼が開いた。
「おはよう」と声をかけると「おはよう」と返してくれる。会話のある生活は僕に潤いを与えてくれた。
数日後、土から双葉のように両手が生えていた。
「引っ張ってくれますか?」と願われ、力いっぱい引き抜くと彼女が土から出て来た。
「これで貴方とデート出来ますね」なんて言うものだから僕は顔を真っ赤にした。
妻が家事を担い始めて数日後。僕は家に居場所がなくなった感じがして、そのストレスから何度も喧嘩した。
「土に還らせてもらいます」
その手紙を残し、妻は頭から地面へと潜っていく。
僕は急いで穴を掘り返し、妻の両手を握った。
間違っても足を引っ張ってはいけない。夫婦とは協力し合うものだから。
植物ってのは愛さえあれば枯れずに長続きするものだ。
あれから数十年。僕も妻もしわくちゃだが会話に花を咲かせている。
公開:20/05/05 10:06

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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