はるばる先に

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「トラ、タマちゃんの所に行くよ」
飼い主がキャリーケースを持ち出し、俺に入るように促す。俺は喜んで中に入った。
タマ、琥珀色の瞳と白い毛が美しい俺の恋猫。
俺は飼い主に命じる。タマの家に急ぐんだ!

車に揺られる事20分。違和感に気付いた。
普段ならもうタマの家に到着していてもおかしくない。おい?どこへ向かっている?
ん?はるばる先に見えるあの看板はもしや動物病院?おのれ!謀ったな!
飼い主は病院の駐車場に車を停める。俺はキャリーケースの中で大暴れした。
「トラ、あそこ見て。タマちゃんいるよ」
そんな嘘に騙されるものか!と、思いながらも目を動かす。
…タマがいた。しかも、これから受ける診察を前に瞳と体を震わせているではないか。
ここは恋猫の俺が安心させてやらないでどうする!
俺はタマに『大丈夫だ』と語り掛けた。

「トラ君、凄く大人しいですね」
「ええ、恋猫の前だから格好つけているんです」
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公開:20/05/05 09:51

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

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