変温家族

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懐かしい声に僕は目を覚ました。随分長く眠っていたような気がする。
地中から顔を出すと、一緒に眠っていた父さんや母さん、妹が既に外に出ていた。
「おはよう。お寝坊さん」
僕らは人の温かい言葉をエネルギーにして生きている。人々の心が凍りつき、冷たい言葉で世界が固まり始め、僕らは長い眠りつくことにした。
さっきの声はどこからだろう。人の姿は見えない。たくさんあったビルもない。鳥の声が響き、動物たちが道路を歩いている。街は緑に覆われていた。
「やっぱり聞こえるよ」
妹が駆け出した。白髪の老婆が一人、歌を歌っていた。彼女は僕らを見つけると
「ああ、やっと会えた。大好きよ。待っていたのよ」
と笑った。あったかい言葉を受け取り抱き締める。体がポカポカしていく。彼女は安心したように目を瞑り、僕らと反対に段々と冷たくなっていった。
「冬眠かな」
そうかも。そうだな。そうね。僕らは彼女を囲んで一緒に眠った。
その他
公開:20/05/05 06:49
更新:20/05/06 06:41

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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