14
12

久しぶりに会う妹の話は、とめどなく続く。私は息をつく暇もなく頷き続けるが、やはり、妹の相談には気持ちが入らない。
「お姉ちゃん、どう思う?彼、本当に奥さんと別れてくれるのかな?」
数時間前に「今日はワインのオプション付きでーす」と少しお道化ながら来た妹は跡形もなく、今はただ、恋に溺れる女性がいるだけだ。
 不倫男の常套句を信じる人間がいるのには驚きだが、私は妹の背中に優しく手を置き、「きっと大丈夫よ」囁いた。
「本当に?」
すがるような妹の目を見て少しひるんだ時、アラームがなった。
妹は、さっと身を引き「ありがとうございました」と財布に手を伸ばした。


あたしの今の稼ぎは、妻と別れない男と、話を聞いてくれる「姉」のレンタル代にすべて消える。
「家族が欲しいだけなのにな」思わず漏れそうになった言葉を、残ったワインで流し込む。
時間が経った安いワインは酸っぱく、あたしをより虚しくさせた。
恋愛
公開:20/05/04 10:25
家族

七下(ななさがり)

旧「はるぽこ」です。
読んでいただき、ありがとうございます。

400字制限の長さと短さの間で、いつも悶えています。
指摘もコメントも、いただけたらすべてを励みにします、大歓迎です。

【優秀賞】
渋谷コンテスト「夜更けのハイビスカス」

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容