ソーダ家族

0
3

家に帰ると、ソーダが置いてあった。
僕はグラスにソーダを注ぐ。

シュワシャワシューシュワシャワシュー

ただの気泡の破裂音なのだが、僕にとっては言葉に聞こえる。
「今日は遅くなるから、昨日の残り温めて食べてね」
それは母の言葉だった。
我が家にとってソーダは、書き置きメモの役割を担っている。

結局母の帰りを待ち、一緒に夕飯を食べた。
「母さん明日も仕事?」
「少し仕事残っちゃってね。でも明日は早く帰るから」
母は最近忙しそうで、僕も心配になってしまう。
「父さんにもあげてきて」
母がそう言い、ソーダを一杯用意する。
僕は父さんの写真が飾られた仏壇へソーダを供えにいった。
鈴を叩き、リーンと音を鳴らす。
グラスを叩き、コンと音を鳴らす。

シュワシャワシューシュワシャワシュー

父さんが何を言っているかは分からない。
けど、「もう少し気を抜いていけよ」と聞こえたような気がした。
その他
公開:20/05/05 18:32
更新:20/05/05 05:07

ゴッペ

だいぶ休んでしまいましたが、またちょくちょく投稿できればといいなぁと思います。
コメントもありがとうございます。
どうぞよろしくおねがいします

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容