夜を狩る

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誰もが家路を辿った道を、誰もが家で眠っている頃に、僕はそっと忍び足で歩く。夜を驚かせないように、だ。
彼の口は弧を描いていて、ご機嫌な様子が窺えた。チラチラと瞬きをする目は楽しげで、僕に気づく気配もない。
「さてと、仕事だ」
ぴゅうっと口笛で相棒の風を呼べば、彼女は肩まで伸びた僕の髪で遊んだ後、早く仕事をさせろと更に纏わり付いた。
「静かにしろって。えっと、まずは青、それから赤、黄色……」
白い風船に、特別な加工をした顔料を詰めて息を吹き込み大きく膨らませれば、準備は完了だ。そっと空中に持ち上げて風に渡すと、仕事の早い彼女はあっという間に高く運んでくれた。あとは僕が、小さな点となったそれを雲製の消音器をつけた銃で狙い撃つ。自慢じゃないが外したことはない。
「おやすみ、夜」
シャン、という命中の合図が響けば、あらゆる色が一斉に降り注ぎ、はじめは白く、そして青く、やがて赤く夜を染めていった。
ファンタジー
公開:20/05/04 20:11
更新:20/05/04 22:28

冬枝

ずいぶん昔に
みじかいお話を書いていました。

人生の曲がり角には、文章を紡ぎたいという欲望にぶつかるようです。

わたしの欲望を果たすためだけの、
自分勝手な自分都合のお話が並ぶかと思います。

温かい目で見て頂けますと幸いです。

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