□ 親族

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 物心ついた頃から、修三さんが俺の本当の父親だった。ベーゴマの回し方、ハゼ釣りの仕掛けの結び方、大人になってからも、職人の心得、飲み屋で背筋を伸ばし続けるコツ、生きるための全部を叩き込んでくれた。
 修三さんの訃報は、“息子”の大輔から知らされた。何か手伝えることがあればと朝から通夜の式場に来た。
「あれ、早いな」大輔が出てきてくれた。
「うん。五十九かぁ。長生きするとは思わんかったけど」
「人の三倍働いて、三倍遊んだからなぁ」
 まだ親族だけだけど、と大輔が受付に案内してくれた。祭壇の部屋では、二十人以上の親族が棺桶を覗いて泣いていた。修三さんにもこんなに親族がいたんだ、と思った。
 芳名帳に故人との関係をチェックする欄があった。俺は息子だと思っていた。けど涙する親族たちを見て、友人の欄にチェックをした。香典袋を出すと、「わざわざ綺麗な札折るんじゃねえよ」と、修三さんに叱られた気がした。
その他
公開:20/05/04 12:37
更新:20/05/04 13:38
月の音色 月の文学館 空耳 〇〇家族

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